誰でもできる!絵画入門。

INDIES ART CLUB and GALLERYアトリエ


デッサンは基本?!/50日間、デッサン体験記。

INDIES ART CLUB and GALLERYのフライヤーの裏や当アトリエで利用した簡単な資料等を時々紹介していこうと思います。
デッサンは基本?!/50日間、デッサン体験記。
『絵画の基本はデッサン!絵が上手くなりたかったらまずデッサンをしなさい!』とよく耳にします。が…、デッサンが出来なくても絵は描けるし、楽しめるし、十分上達もします。なのにどうしてデッサンなのか?!

以下、当アトリエ受講生の50日間基礎デッサンコース体験記をご覧下さい。

レッスンを通して、今まで「デッサン」という行為に持っていた印象が180度覆った。以下に挙げた内容は私個人の見解であり、別の人がデッサンと向き合えば全く感じ方も違うと思う。

 現在、美術教室や通信教育、書籍等でデッサン講座と謳っているものは沢山ある。パンフレットや本を開いてみても、「デッサンは絵を描く為に必須」「楽しく学べて上達できる」等、デッサンをしさえすれば絵が上手くなるという風に思えることばかりが書いてある。私も、絵が上手くなりたいのであればまず、デッサンを習得しなければ油絵もパステルも何も描けないと思っていた。絵が上手くなりたい!まずデッサンを習いたい!と思い教室の門を叩いた。

 デッサンさえすれば絵が上手くなる。先生に教えてもらえさえすれば油絵でも何でも描けるようになると思い込んでいた。ワクワクしながらデッサン初日を迎え、開始30分で愕然とした。鏡を見ながら自分を描く。ただそれだけなのに、自分の身体がどうなっているのかさっぱりわからなかった。最初に描いたデッサンは、箱のような胴体に不自然に腕みたいなものがくっついていて、胸もお椀をくっつけた様な有様だった。
 先入観だらけの自分に気付き、しばらくショックを受けたが、少しずつ先入観を取り除いていくしかないと感じた。

 デッサンを続けていく中で、自分が普段どのような事に目を向けているのかや、どのように絵と向き合っているのかが少しずつ浮き彫りになってくる。
始めた当初から、私は自分の中で「上手く描かなきゃ」「早く上手くならなきゃ」ということで頭がいっぱいだった。鏡の向こうの自分を描くデッサンなのに、対象を見ているようで見ておらず、上手く描かなければという気持ちばかりが先行してしまう。焦って頭の中が整理できなくなり線が荒れる。必死になればなるほど描けない。一生懸命やれば上手くいく訳でもない。「集中して何が何でも描いてやる」という様な意気込みで画面と向かい合ってもただ視野が狭くなり、線が荒くなるだけで全く上手くいかない。かと言って、ダラダラのんびり描けばいいというものでもない。線が繋がらなくなって形と形が繋がらない。
 何度も何度も描かなければ、「安定した」デッサンは描けない。安定するまでは昨日描けた部分が描けなくなったり、逆に今日全く描けなかった箇所が次の日スムーズに描けたりと不安定ながらも、書き続ける必要がある。
 デッサンは否応無しに自分と向き合うものだと思い知らされた。描かなければ描けない。描いても描けない事が沢山。絵を描くって辛いことなのか?なんでこんな苦しい事しているのか?と思った日も少なくない。通信販売のパンフレットにあった「楽しく学べて上達」なんて夢のまた夢だと思った。

 毎日デッサンをして、向き合っていくうちに少しずつ自分の考えの癖や、性格がぼんやりわかってきた。苦しいながらも続けていくうちに自分の扱い方がほんの少しだけわかったような気がした。
 具体的に言えば、私の場合ずっと長時間描くよりは、30分置きに少し休憩した方が視野が広く保てる。描き始める時にいつも画面の左を広く空けてしまうので、最初から少し左に詰めて描けばバランスが良くなる。人が座っている絵を描く時は、いつも腕や足を短く太く描いてしまうので、意識して描けば丁度いい長さになる等だ。
 先生に指摘されてわかる部分も沢山あるが、自分の癖を自分で見つけて直していく行程も非常に大事だと思う。これから自分の絵を描いていくには「なんでこういう構造なんだ?」「なんでいつもこう描いてしまうのだろう?」といった自分や描く対象に対する「なんで?」を見つけて消化していく行為の繰り返しなのだと思う。

 デッサンとは、描く対象物(今回は鏡の中の自分)を見つめて、頭の中で作り上げた自分と本当の自分のギャップを埋める作業の事だとわかった。ギャップを埋める作業とは、描きながら自分の良い所も悪い所も洗いざらいに並べ立て、何もかも「これが自分なんだ」と飲み込んでしまう事、ありのままの自分を認める行為の事だ。デッサンに自分らしさや個性等は必要ない。ただただ対象物を客観的にとらえ、描き続ける事のみが重要だ。先入観だらけの自分を見つめ直し、少しずつ先入観を取り除いていく。あるがままの自分を見つめ、受け入れるまでは非常に苦しいが、一旦受け入れてしまえば楽になる。日常生活の中でも、辛い事や悲しいことがあった時に何かと理由をつけて、自分を正当化したくなるが、一度デッサンの考え方を習得すれば、その考え方を応用して、様々な物事に対処する力がつく。デッサンを知る事で自分自身が楽になる。

 これからデッサンを始める人へ。決して楽な作業ではないですが、自分自身を知り、考え方を見直す良い機会になると思います。興味のある方はぜひチャレンジしてみて下さい。

nkym

●自分を自分で見つめて、自分を確認して、隅々まで自分を知る。そして、先入観なしのフラットな状態で対象と向き合う。そんな姿勢を養う行為をデッサンというのかもしれません。デッサンが基本と言われる所以はここにある気がします。